• 2026年10月16日
  • 2026年10月19日

朝食は”心を整える”最初の一歩〜すこし食べるだけで変わること

「朝は時間がないから」「そもそもお腹が空かない」

そんな理由で、朝食を抜く習慣がある方は少なくありません。実際に、国の調査でも朝食を食べない方の割合が最も高いのは20歳代とされており(協会けんぽ「朝ごはん生活を始めるための4つの習慣」より)、忙しい世代ほど朝食が後回しになりやすいことがうかがえます。

「1日3食にこだわらなくてもいい」という考え方を目にすることもありますが、実際のところ、朝食にはどんな意味があるのでしょうか。越谷Kこころのクリニックでは、心と身体はつながっているという視点から、日々の食事や睡眠などの生活リズムについてもお伝えしています。今回は、朝食の大切さと、無理なく続けるためのヒントについて考えてみたいと思います。

朝食欠食については、これまで数多くの研究が行われてきました。朝食を食べない習慣は、肥満や脂質異常症、高血圧、糖尿病などと関連することが、さまざまな研究で示されています。

私たちの身体には「体内時計」が備わっています。朝の光は脳にある”主時計”を整え、朝食は肝臓などの全身の臓器にある”末梢時計”を整える合図になると考えられています。朝食を抜くと、この主時計と末梢時計の間にずれが生じやすくなります。肝臓の時計遺伝子や脂質代謝に関わる遺伝子の働くリズムが後ろにずれ、身体が活動モードに切り替わるタイミングも遅れてしまいます。その結果、エネルギーを消費しにくい状態が続き、体重が増えやすくなると考えられています。

また、朝食を高たんぱくな内容にすると、その日の昼食や夕食後の血糖値の上がり方まで穏やかになる、という報告もあります。これは「セカンドミールエフェクト」と呼ばれ、朝の食事が、その日一日の血糖コントロールの土台になっていることを示しています。

睡眠中は長い時間、食事を摂らない状態が続くため、朝起きた時点で身体は、エネルギーが不足しがちな状態にあります。脳は主にブドウ糖をエネルギー源として働いているため、朝食を抜くと、午前中にぼんやりしたり、集中しづらくなったりすることがあります。

「ギリギリまで寝ていたい…」「朝食を用意するのが面倒…」と、気持ちが前向きにならない日もあるかと思います。次の項目ではちょっとしたコツをご紹介しますので、ぜひ参考にして、できるところから始めてみましょう。

朝食は、身体だけでなく心の調子とも無関係ではありません。気分や意欲の波は、睡眠のリズムや食事の時間、日中の活動量といった「生活リズム」と深く関わっているためです。

  • 朝起きて光を浴び、朝食を食べることで、体内時計が整いやすくなります
  • 体内時計が整うと、夜に自然な眠気が訪れやすくなり、睡眠の質にもよい影響が期待できます
  • 反対に、夜更かしや朝食抜きが続くと、リズムが夜型にずれ、日中のだるさや気分の落ち込みを感じやすくなることがあります

もちろん、朝食を食べるだけで心の不調がすべて解決するわけではありません。ただ、「眠りが浅い」「朝がつらい」と感じている方にとって、朝食は生活リズムを立て直すための、取り組みやすい入り口のひとつになります。眠りの悩みが続く場合は、当院の不眠症のページや睡眠外来のページもあわせてご覧ください。

「朝食が大切なのは分かっているけれど、続けられない」という方は非常に多くいらっしゃいます。これは意志の弱さの問題ではなく、多くの場合「仕組み」の問題です。次のような工夫をぜひ試してみませんか?

朝、何も考えなくても食べられる状態を作っておくことで、判断の負担を減らします。

  • 夕食のおかずの一部を、翌朝の朝食用として取り分けておく
  • 夕食の調理の際に、朝食の分も一緒に調理する(ゆで卵やおにぎりなど)

「しっかりした朝食」を目指すのではなく、「まずは何か一口」から始めます。

  • フルーツ+プレーンヨーグルト
  • おにぎり+ゆで卵

目につく場所に食べやすいものを置いておくだけでも、行動のきっかけになります。

  • 食卓にフルーツを置いておく
  • 冷蔵庫の手前に牛乳を入れておく

完璧な朝食を目指そうとすると、かえって続かなくなってしまいます。まずは「毎日できる小さな一歩」から始めることが、実はとても理にかなった進め方です。

朝食を食べることができている、あるいは食べられるようになってきた方は、一歩進んで「何を食べるか」にも目を向けてみましょう。ここで、オーソモレキュラー栄養学の視点が役立ちます。

朝食において特に注目したいのが、たんぱく質です。睡眠中は長時間食事を摂らない状態が続くため、朝起きた時点で身体はすでにエネルギー不足に近い状態にあります。ここでたんぱく質をしっかり摂ることで、血糖値の急な乱高下を防ぎやすくなり、脳や身体を働かせるための材料も安定して供給されます。

逆に、糖質だけに偏った朝食(菓子パンや甘い飲み物だけ、など)では、血糖値が急上昇したあとに急降下しやすく、午前中の集中力の低下やイライラにつながる可能性があります。

卵、乳製品、大豆製品など、以前のブログでご紹介したDVS(食品摂取多様性得点)の食品群を意識しながら、朝食にもたんぱく質源をもう一品加えてみる。これだけでも、身体にとって大きな違いになります。

  • はじめの一歩:コップ一杯の牛乳、ゆで卵一つ、プレーンヨーグルト
  • もう一歩:おにぎり+ゆで卵+インスタントでもよいので味噌汁(具に豆腐や卵を加える)
  • 余裕がある日:ごはんまたはパンに、卵料理・納豆・チーズ・魚などのたんぱく質源、野菜やフルーツを添える

なお、腎臓の病気などで食事の制限がある方や、アレルギーのある方、すでに食事療法を受けている方は、内容を変える前に主治医へご相談ください。

「朝はもともとお腹が空かない」ということは、誰にでもあります。一方で、次のような状態が続いている場合は、食事の工夫だけでなく、心や身体のサインとして受け止めることも大切です。

  • 朝だけでなく、一日を通して食欲がない状態が2週間以上続いている
  • 気分の落ち込みや、何をしても楽しめない感じがある
  • 眠れない、または寝すぎてしまう日が続いている
  • 強い不安や緊張で、食べ物がのどを通らない
  • 体重が短期間で大きく変わった

こうした状態は、うつ病や不安障害、適応障害などで見られることがあります。もちろん、これらに当てはまるかどうかは医師の診察で確認が必要です。「食べられない自分はダメだ」と責める必要はありません。こころの不調や相談先については、厚生労働省「こころの病気サポート」でも情報が公開されています。

「これくらいで受診してよいのだろうか」と迷われる方も多いですが、お気軽にご相談いただいて大丈夫です。初めての方は、初診の方へのページもご覧ください。

朝食欠食が、体重増加や生活習慣病のリスクと関連していることが分かっています。ですが、朝食の大切さが理解できていても、思うように身体が動かず、実行に移せないこともあるかと思います。まずは完璧を目指すのではなく、続けられる小さな仕組みを作っていきましょう。

「朝食を食べなければいけない」と気負う必要はありません。自分の食嗜好に合わせて、「これなら食べられそう」というものからスタートしていきましょう。少し余裕のある方は、前日の夜に準備をしておくことで、ゆとりをもって朝の時間を過ごすことができます。自分のライフスタイルに合わせた、小さな仕組みを考えていきましょう。

オーソモレキュラー栄養学からは、朝食にたんぱく質(なるべく動物性たんぱく質)を取り入れることが、血糖値の安定や午前中のパフォーマンスにつながる、というお話をしました。まずは、コップ一杯の牛乳や、ゆで卵一つからでも構いません。無理なく続けられる形で、朝の食事を少しずつ整えていくことから始めてみませんか。

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