- 2026年9月11日
- 2026年9月14日
大人の学習障害(LD)「読み書き・計算が苦手」を放置NG

「会議の議事録がうまくまとめられない」「資料を読むのに人の何倍も時間がかかる」「簡単な計算のはずなのにミスが多い」
仕事の中でこうした困りごとが続き、「自分は要領が悪いだけなのだろうか」と悩んでいませんか。
発達障害というとADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)が知られていますが、発達障害にはもうひとつ、「読む」「書く」「計算する」といった特定の学習面にだけ困難が現れる「学習障害(LD)」という分類があります。知的な遅れはなく、努力不足でもないのに、特定の分野だけがうまくいかない——それがLDの特徴です。
この記事では、大人の学習障害(LD)の特性やASD・ADHDとの違い、よくあるサイン、放置した場合のリスク、診断や治療の流れ、利用できる公的支援制度まで、越谷Kこころのクリニックが分かりやすく解説します。
大人の学習障害(LD・SLD)とは?ASD・ADHDとの違い
学習障害(LD)は、全般的な知的発達に遅れがないにもかかわらず、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」のうち、特定の能力の習得や使用に著しい困難がある状態を指します。医学的な診断基準(DSM-5-TR)では「限局性学習症(SLD)」という名称が用いられており、困難が生じる分野によって「読字」「書字表出」「算数」の3つに大きく分けられます。
生まれつきの脳機能の特性によるものと考えられており、本人の努力不足や「甘え」が原因ではありません。ADHDが不注意・多動性・衝動性、ASDが対人関係やこだわりの特性であるのに対し、LDは学習の特定分野に困難が集中する点が異なります。ただし、ADHDやASDとLDが重なって現れる方も少なくなく、「発達障害グレーゾーン」といわれる、特性はあるものの診断基準を完全には満たさない状態の中に、LD的な特性が含まれているケースもあります。
厚生労働省の資料でも、学習障害(限局性学習障害)は自閉症スペクトラムやADHDと並ぶ発達障害の代表的な特性のひとつとして紹介されています(厚生労働省「発達障害の特性(代表例)」)。
こんなサインはありませんか?大人のLDチェックリスト
学習障害の現れ方は人によって大きく異なります。以下は職場や日常生活でよく聞かれる困りごとの例です。複数当てはまるからといって必ずしもLDとは限りませんが、ひとつの目安としてご覧ください。
読むことの困難(読字)
- 文章を読むのにとても時間がかかり、一字ずつ拾い読みしてしまう
- メールや資料を読んでも内容が頭に入ってこない、何度も読み返してしまう
- 行を読み飛ばしたり、同じ行を繰り返し読んでしまったりする
書くことの困難(書字表出)
- 誤字脱字が多く、何度確認しても気づけない
- 頭の中の考えを文章として組み立てるのに人一倍時間がかかる
- 黒板や画面の内容をノートに書き写すのが極端に遅い
計算・推論の困難(算数)
- 簡単な暗算や繰り上がり・繰り下がりの計算でミスが多い
- レジ打ちや伝票の金額計算など、数字を扱う作業でつまずきやすい
- 図形やグラフから必要な情報を読み取ることが難しい
なぜ「大人になってから」気づくケースが多いのか
学習障害の特性自体は生まれつきのものですが、困りごととして表面化する時期は人によって異なります。学生時代は得意科目でカバーできていたり、周囲のサポートを受けられたりしたことで、大きな問題として意識されないまま過ごせるケースが少なくありません。
しかし社会人になると、資料作成・議事録・報告書といった「書く」場面や、正確なスピードを求められる「計算」「読解」の場面が一気に増えます。学生時代には目立たなかった特性が、仕事の負荷や責任の重さによって初めて「困りごと」として顕在化し、そこで初めて医療機関への相談を考える方が多いのです。
放置するとどうなる?二次障害のリスク
特性そのものよりも心配なのが、「自分はできない人間だ」という自己評価の低下や、それに伴ううつ状態・不安障害などの二次障害です。周囲から「努力不足」「注意力が足りない」と誤解され続けると、自己肯定感が大きく損なわれてしまうことがあります。
実際に、学習障害への理解や配慮が得られないまま働き続けた結果、抑うつ症状や強い不安を抱えて受診される方も少なくありません。気分の落ち込みが続く場合はうつ病、強い緊張や心配が続く場合は不安障害のページも参考にしてください。特性を正しく理解し、早めに環境調整を行うことが二次障害の予防につながります。
医療機関での診断の流れ
学習障害が疑われる場合、医療機関では主に以下のような流れで評価を行います。診断名をつけること自体が目的ではなく、「何が得意で、何が苦手なのか」を整理し、今後の対応につなげることが大切です。
- 問診:現在の困りごとに加え、学生時代からの学習面での経過(生育歴)を丁寧に伺います
- 心理検査:WAIS-Ⅳ(ウェクスラー成人知能検査)などを用いて、言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度といった認知機能の得意・不得意のバランスを確認します
- 鑑別:ADHDやASDなど他の発達障害、うつ病や不安障害など他の疾患との重なりがないかを合わせて評価します
- 総合的な判断:検査結果と日常生活での困りごとを踏まえ、医師が総合的に診断・説明を行います
検査の数値だけで「白黒」がつくものではなく、生活上の困りごとを一緒に整理していくプロセスそのものに意味があります。診断名にこだわりすぎず、まずは困りごとを相談することから始めてみてください。
治療と職場でできる工夫・支援
学習障害そのものを薬で「治す」治療法はありませんが、特性に合わせた工夫や環境調整によって、困りごとを大きく軽減できる可能性があります。
- 読み上げソフトや音声入力、文字拡大・フォント変更などのICTツールの活用
- メモやチェックリスト、リマインダーアプリなどによる情報の整理・記録の補助
- 業務の指示を口頭だけでなく文書や図でも受け取れるよう依頼する
- 得意な分野を活かせる業務配分について、上司や人事に相談する
- 必要に応じたカウンセリングによる、自己理解の整理や気持ちの整理
あわせて、抑うつ症状や強い不安などの二次障害がある場合は、その治療を並行して行うことも重要です。特性への配慮と心身の状態の両面から、無理のない働き方を一緒に考えていきます。
利用できる可能性のある公的支援制度
学習障害を含む発達障害の診断を受けた方は、状態に応じて次のような公的支援制度を利用できる場合があります。制度の対象や手続きの詳細は、担当窓口や主治医にご確認ください。
- 精神障害者保健福祉手帳:症状や生活のしづらさの程度に応じて交付され、税制優遇や各種サービスの利用につながる場合があります
- 自立支援医療制度(精神通院医療):通院にかかる医療費の自己負担を軽減できる制度です
- 職場での合理的配慮:障害者差別解消法に基づき、業務内容や指示方法などについて事業主に配慮を求められる場合があります。詳しくは厚生労働省「発達障害の特性(代表例)」もご参照ください
越谷Kこころのクリニックのサポートについて
越谷Kこころのクリニックでは、大人の発達障害(ADHD・ASD・学習障害)や、それに伴ううつ・不安といった二次的な症状について、丁寧な問診とWAIS-Ⅳなどの心理検査を通じて、お一人おひとりの特性に合わせたご相談をお受けしています。
「診断名をつけたいわけではないけれど、生きづらさの理由を知りたい」という段階でも構いません。必要に応じて精神障害者保健福祉手帳や自立支援医療制度に関するご案内、診断書の発行にも対応しております。「読み書き・計算が苦手」という悩みを一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
東武スカイツリーライン「新越谷」駅より徒歩1分、JR武蔵野線「南越谷」駅より徒歩2分。ご予約はWEB予約よりお取りいただけます。初めて受診される方は初診の方へのページもあわせてご確認ください。