• 2026年8月28日
  • 2026年8月31日

精神障害者の障害年金とは?対象条件と受給までの流れ

「症状がつらくて、これまでのように働けない」「収入が減って生活が不安」

精神疾患を抱えながら通院を続けている方の中には、そうした悩みを一人で抱え込んでいる方が少なくありません。

うつ病や統合失調症、双極性障害、発達障害など、多くの精神疾患は「障害年金」の対象になります。障害年金は、症状によって日常生活や仕事に支障が出ている方の暮らしを経済面から支える公的な制度です。

この記事では、精神障害者の方が障害年金を受け取るための対象条件、受給できる金額の目安、申請までの流れをわかりやすく解説します。

障害年金は、病気やけがによって生活や仕事に支障が生じたときに受け取れる公的年金制度です。「年金」という名前ですが、老後に受け取るものだけではなく、20代・30代の現役世代でも要件を満たせば受給できます。

障害年金には大きく2種類があります。

  • 障害基礎年金:国民年金加入中に初診日がある場合が対象。等級は1級・2級。
  • 障害厚生年金:厚生年金(会社員・公務員など)加入中に初診日がある場合が対象。等級は1級・2級・3級で、3級は障害厚生年金のみの制度です。

会社員として働いていた期間に発病・初診があった方は、障害基礎年金に上乗せする形で障害厚生年金も請求できるケースがあります。

精神疾患に関する経済的な支援制度としては、障害年金のほかに「精神障害者保健福祉手帳」と「自立支援医療制度」があります。3つは目的も認定の仕組みも異なるため、混同しないよう整理しておきましょう。

  • 自立支援医療制度:通院にかかる医療費の自己負担を軽減する制度(原則1割負担)。年金とは別に、治療を続けやすくするための仕組みです。
  • 精神障害者保健福祉手帳:税制優遇や公共料金の割引など、生活面でのさまざまな支援を受けやすくするための手帳です。等級は1〜3級。
  • 障害年金:症状によって収入を得ることが難しい状態にあることに対して、現金給付を行う所得保障の制度です。

手帳の等級と障害年金の等級は、審査の基準が異なるため必ずしも一致しません。手帳を持っていない方でも障害年金を受給できる場合がありますし、その逆もあります。「うちは手帳の対象にならなかったから年金も無理」と自己判断せず、それぞれ別の制度として検討することが大切です。

障害年金の対象となる精神の障害には、次のようなものがあります。

パニック障害や強迫性障害、不安障害、適応障害などは、原則としてそれ単独では障害年金の対象外とされていますが、症状が重く、統合失調症や気分障害に準じる状態と認められる場合には対象となることもあります。判断は個別の状態によるため、まずは医師や年金事務所に相談することをおすすめします。

障害年金は、次の3つの要件をすべて満たす場合に支給されます。

  • ① 初診日要件:障害の原因となった病気について、初めて医師の診察を受けた日(初診日)が、国民年金または厚生年金の加入期間中などにあること。
  • ② 障害状態要件:原則として初診日から1年6か月を経過した日(障害認定日)において、障害等級表に定める1〜3級のいずれかに該当する状態にあること。
  • ③ 保険料納付要件:初診日の前日時点で、保険料納付済期間と免除期間の合計が加入期間の3分の2以上あること(直近1年間に未納がない場合も可)。

精神疾患は「いつから調子を崩していたか」があいまいになりやすく、初診日の特定でつまずくケースが多い分野です。詳しい認定基準は日本年金機構の障害年金制度ページでも確認できますが、判断に迷う場合は年金事務所や社会保険労務士への相談も検討しましょう。

精神の障害の等級は、症状の重さだけでなく、日常生活や就労にどの程度の支障があるかを含めて総合的に判定されます。目安は次のとおりです。

  • 1級:他人の介助がなければ日常生活のほとんどができない状態(入院・在宅介護が必要で、活動範囲がベッド周辺に限られるレベル)
  • 2級:日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない状態(活動範囲が病院内・家屋内に限られるレベル)
  • 3級(障害厚生年金のみ):労働に著しい制限を受ける、または制限を加える必要がある状態

令和8年4月分からの年金額(年額)の目安は次のとおりです。

  • 障害基礎年金1級:約105万9千円+子の加算額
  • 障害基礎年金2級:約84万7千円+子の加算額
  • 障害厚生年金1級・2級:これまでの給与・賞与や加入期間に応じた報酬比例の年金額(2級は基礎年金に上乗せ、1級はその1.25倍)+配偶者の加給年金額
  • 障害厚生年金3級:報酬比例の年金額(最低保障額 約63万5千円)

金額は生年月日や加入状況によって変わります。最新の正確な金額は日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」でご確認ください。

  • ① 初診日を確認する:初めてその病気で医師にかかった日と、当時加入していた年金制度を確認します。
  • ② 保険料の納付状況を確認する:年金事務所やねんきんネットで、保険料納付要件を満たしているかを確認します。
  • ③ 障害認定日を迎える:原則、初診日から1年6か月が経過した日が障害認定日です。この時点、または請求時点の症状で等級が判定されます。
  • ④ 診断書・必要書類をそろえる:主治医に診断書の作成を依頼し、病歴・就労状況等申立書などをそろえます(詳しくは次章)。
  • ⑤ 年金事務所・共済組合等に請求書を提出する:書類がそろったら、年金請求書とあわせて提出します。
  • ⑥ 審査・支給決定:提出後、審査を経て支給の可否と等級が決定されます。結果が出るまで数か月かかることが一般的です。

障害認定日から時間が経ってから請求する場合(事後重症請求)は、請求した月の翌月分からの支給となり、さかのぼっての受給はできません。症状が要件を満たしていると感じたら、早めに準備を始めることが大切です。

精神障害での障害年金請求では、主に次のような書類が必要です。

  • 診断書(精神の障害用):主治医に作成を依頼します。日常生活能力の判定など、審査で重視される項目が含まれるため、日頃の生活状況を診察時に具体的に伝えておくことが重要です。
  • 受診状況等証明書:初診の医療機関と、現在(または障害認定日当時)の診断書を書いた医療機関が異なる場合に必要です。
  • 病歴・就労状況等申立書:発病から現在までの経過や、就労状況を請求者自身の言葉でまとめる書類です。診断書だけでは伝わりにくい生活上の困難を補足する、審査上とても重要な書類です。
  • 年金請求書:氏名・住所・家族構成など、請求の基本事項を記載します。

書類の様式や記入例は、年金事務所の窓口やインターネットで入手できます。当院では、通院歴の長い患者さまについて、診断書の作成や、これまでの通院・症状の経過に関するご相談に対応しています。

「仕事をしていると障害年金はもらえない」と思われがちですが、それは誤解です。障害者雇用や配慮のある働き方で、短時間勤務・軽作業を続けながら2級を受給しているケースも少なくありません。

重要なのは、就労の有無そのものではなく、どのような配慮のもとで、どの程度の負荷で働けているかです。診断書や申立書には、勤務時間・業務内容・周囲のサポート状況などを具体的に記載してもらうようにしましょう。

現在お仕事を休職中の方は、休職の制度や傷病手当金とあわせて、生活を支える選択肢として障害年金の対象になるかどうかを確認しておくと安心です。

障害年金の申請には、初診日の特定や書類の準備など、専門的でわかりにくい手続きが多くあります。「自分が対象になるのか分からない」という方は、一人で悩まず、まずは年金事務所の窓口や社会保険労務士にご相談することをおすすめします。

なお、当院では障害年金用の診断書の作成には対応しておりません。診断書が必要な場合は、事前に年金事務所や社会保険労務士にご相談のうえ、対応可能な医療機関をご確認ください。当院では、自立支援医療制度や精神障害者保健福祉手帳など、通院にともなう経済的な負担を軽減する制度についてのご案内は行っておりますので、お気軽にご相談ください。

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